2020年3月に公表されたアメリカ海兵隊「戦力デザイン2030」は今後の海兵隊が目指す新たな方針を示した報告書です。その内容は大胆なもので、戦車を全廃し火砲を削減する代わりにロケット・ミサイル部隊を大幅に増強、新しい主力兵装として地対艦ミサイルを導入して中国艦隊と戦おうというものです。揚陸作戦能力や空中機動能力を必要なだけ維持したまま、沖合に居る敵艦と戦えるようになるのです。
[PDF資料]Force Design 2030 - HQMC
ただしこの報告書はアメリカ海兵隊の内部に向けて意見を求めるもので、まだ確定していない数字も含みます。そして内部向けなので「これくらい知っていて当然だろう」と説明を大幅に端折っている部分が多く、外部の人間が読む場合は予備知識が無いと誤読しかねない文書となっています。ここではこの資料を読む際の要注意点を紹介しておきます。
元資料「戦力デザイン2030」にはこの解説図でいうと新構想の欄と増減数しか数字が書かれていません。現有計画の数字は思い至って当然だろうと紹介されていないのです。そこで最も誤読しそうな例としてティルトローター飛行隊(MV-22オスプレイを運用する飛行隊で略記号はVMM)の部分を抜き出してみましょう。
これは現有計画の17個飛行隊から3個飛行隊を削減して14個飛行隊にしてはどうかという提案です。17個という数字は元資料にはありません、読み手が各自この数字に思い至って当然であるという前提で話が進んでいます。
○17-3=14
×14-3=11
×14→3
17という数字が紹介されていないにも拘わらず、17-3で14個という意味だと把握することが要求されます。14-3で11個という意味ではないし、ましてや14個が3個に激減するわけではありません。divestment (ダイベストメント)とは本来は経済用語で「投資撤退」を意味します。軍事報告書では廃止や処分という意味になるでしょう。
なおVMMは現状で現役飛行隊18個体制で、2030年までにVMM-264が非現役化され17個体制になります。現役飛行隊の他に予備役飛行隊や練習飛行隊もありますが「戦力デザイン2030」では紹介されていません。またこの報告書の記述ではVMMが14個になるというのは推奨するという提案でしかないので、アメリカの各メディアは確定している削減数1個のみを紹介している場合が多かったように思います。
- VMM現役18個→17個(確定)→更に3個削減して14個にしてはどうか(推奨)
「戦力デザイン2030」には「3個削減して14個にしてはどうか(推奨)」という箇所しか記載されていません。前提部分が端折られているのです。
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June 03, 2020 at 12:00AM
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