医学に特化した世界有数の理工系名門大学であるインペリアル・カレッジ・ロンドンが3月26日に発表した調査報告書は、ブラジル全人口の75%を自宅隔離する厳格な新型コロナウイルス感染防止強制措置を行う場合、最大で入院者は25万人、死亡者は4万4,000人にそれぞれ抑制できると予想している。ブラジル国内では28日現時点で27州中24州が厳格な強制措置を講じている。
一方、報告書は高齢者のみを対象に感染防止強制措置を行う場合は1,200万人が感染。320万人が入院するとしている。そして重症者70万2,000人となり、死亡者数は53万人になるとする。
イベントの禁止や人の接触・往来制限など柔軟な感染防止強制措置を行う場合は122万人が感染する。そして350万人が入院する。重症者は83万1,000人となり、死亡者数は62万7,000人になるとしている。
そして、強制的な感染防止措置を全く行わない場合は総人口の88%に相当する1億8,800万人が感染。620万人が入院。重症者は150万人、死亡者は115万人に達するとしている。
ブラジルでは急激な感染拡大(当地紙グローボ系G1都市別感染マップ参照)を受けて各州政府・市当局がロックダウン(都市封鎖)の実施に踏み切った。これに対してボルソナーロ大統領は、経済の混乱を防ぐとの理由で各州政府の厳格な強制措置を批判し、国内では対立が生じている。大統領は行政暫定措置(MP)を通じて、経済活動に不可欠な業種の活動継続を義務付けるとともに、州知事らに対して強制措置の緩和を要請し、高齢者など重症化リスクの高い人に限定した強制措置を提案している。
各州知事や連邦議会上下両院議長は人命尊重と危機管理の不足と大統領の姿勢を批判して、27州中24州の州知事が大統領の批判を無視して厳格な強制措置を継続している。ブラジル主要都市では、市民らが鍋を叩いてボルソナーロ大統領を抗議する行動が連夜続き、28日にはサンパウロ市内で自動車が一斉にクラクションを鳴らす抗議行動も発生した。
3月27日付「ゼロ・オーラ」紙は、国内全土で呼吸器を備えたICU(集中治療)ベッド数は4万6,000台しかなく、厳格な感染防止強制措置を行わなければ医療崩壊が起きると報道。一方、ブラジルでは経済悪化により治安が悪くなることも大きな心配材料だ。「医療崩壊の防止」と「治安悪化の防止」はある意味二律背反の関係にあるため、ブラジル全土の感染防止強制措置の行方については、今後の動向を十分注視する必要がありそうだ。
このインペリアル・カレッジ・ロンドンの調査報告書「COVID-19の世界的な影響と緩和と抑制のための戦略」は世界保健機関(WHO)に関連のある50人の科学者が作成に関与したもので、同大学報告書サイトで入手できる。同報告書は感染防止措置の度合いに応じた4つのシナリオで世界各国の感染状況を予測している。同報告書は各国政府が診断テスト、患者の隔離、ウイルスの蔓延を防ぐための社会的距離確保など厳格な措置を早期に講じれば、死亡率は95%減少し、計3,860万人の命が救えると結論付けている。
(大久保敦)
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March 30, 2020 at 11:35AM
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英大学報告書、厳格なロックダウンで新型コロナウイルス感染死亡者は最大4万4,000人と予測(ブラジル) | ビジネス短信 - ジェトロ(日本貿易振興機構)
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