伊達市民の被ばくデータを本人の同意を得ずに論文に使用していた問題で、市が設置した調査委員会(駒田眞一委員長)が17日、報告書を取りまとめ、須田博之市長に提出した。報告書は、3万4000人分の同意が得られていなかったとした上で、「個人情報の取扱上、不適切だった」と結論づけた。一方、報告書では多くの経緯が未解明のままとなっており、市民からは警察の協力を得るべきだとする声があがった。
原発事故が発生した2011年8月以降、「ガラスバッジ」と呼ばれる個人線量計を市民に配布し、積極的な被爆線量計測を行ってきた伊達市。2012年には全住民を対象に線量計を配布し、大規模な調査を実施していた。ところが、これらのデータが市民の知らないところで研究者の手にわたり、同意を得ていない住民のデータも含め論文となっていたことが発覚。昨年2月、市がデータ提供の経緯を解明する調査委員会を設置していた。
伊達市被爆データ提供に関する調査委員会報告書(2020年3月17日)
報告書によると、同意を得ずに研究者に提供されていたのは、調査前に市が把握していた人数より多い3万4241人分の個人線量データで、研究者に手渡されたCDには、地番を含む住所などの個人情報も含まれていた。また、これらのデータを外部に持ち出したにも関わらず、組織内での決裁を受けておらず、持ち出した記録も作成されていなかった。
報告書を受け取った須田市長は、「個人情報を含むデータを提供された可能性があるということ。これら調査内容を真摯に受け止め、再発防止に向けて、しっかり対応していきたい。」と述べ、市民に対しても説明する考えを示した。
2015年8月12日、伊達市職員が宮崎氏に個人情報の含まれたCDを手渡したとされるりょうぜん虹彩館。
多くの経緯が未解明
一方で報告書では、誰がデータを提供したのかや、データが廃棄されたかどうかなど、多くの部分が解明されなかった。「個人保護情報審議会に意見を聴いていれば、(中略)外部提供することが可能であった」(報告書)データであったにも関わらず、なぜ市民に秘密裏で提供され、研究が行われたのか。この点も、触れられなかった。
報告書では、「市の依頼によってデータ解析が行われた」としているが、データ提供に関与した当時の仁志田昇司前市長も、半澤隆宏直轄理事も2017年の議会答弁では、この事実を隠し続けていた。テータ提供をめぐっては、実態と異なる日付や内容の文書が作成されるなど、不自然な点が多数あるが、こうした点も解明されなかった。
また2015年2月に、千代田テクノルが研究者2人にデータ提供した経緯についても、ほとんど記載がなかった。市は同年7月末、宮崎氏から、GISコードを利用して作成した解析図を受け取っている。この図は論文に掲載された内容と類似しており、研究者の手元にはこの時点で、第8次航空機モニタリングが実施された2014年6月までのデータを解析していたことを意味するが、時系列表にさえ、この事実が記載されていなかった。
被ばく線量データの提供を市民の立場から検証している市民団体の代表で、東京大学と福島医大に研究不正調査を申し立てた島明美さんは報告書について「踏み込みが足りない」と批判。個人情報を含む被爆データが格納されたCDが紛失したまま、見つかっていないことについて、「分からないままになっているのは問題」と指摘。「市が困っているなら警察に相談してほしい」と述べ、個人情報を軽く扱っている市の対応を批判した。
新たなデータ提供はせず〜伊達市長
伊達市のデータを使った研究をめぐっては、市民の申し立てを受け、データの提供を受けた東京大学と福島県立医科大学がそれぞれ研究不正調査を実施。昨年7月、福島医大は「研究者に重大な違反や過失があったとは認定できない」とする調査報告書を公表した。その際、伊達市側に原因があったと指摘し、伊達市に対し改めてデータを提供するよう求めていた。
この点について須田市長は「もし提供するとすれば、改めて同意を取る必要があるが、市としては、改めて同意を取ることは困難だ」と述べ、データを再提供することはしないと明言した。一方、福島医大は「本報告書及び昨日の伊達市長様ご発言内容について、研究を委託された本学としては、委託元である伊達市様から直接ご報告、ご説明をいただけるものと考えており、その前に何らかのコメントをすることは控えさせていただきます。宮崎講師も同様です。」と回答した。
同論文は、国の放射線審議会が線量基準の見直しを議論する際、参考研究として採用されたが、データの不正提供疑惑が浮上したため、報告書からは削除された。また国際放射線防護委員会(ICRP)の新たな勧告の中にも掲載される予定だったが、最終的には削除されたという。このほか、著者のひとり早野龍五氏によると、国連科学委員会(UNSCEAR)報告書にも盛り込まれる予定だった。さらに、原子力規制委員会の田中俊一前委員長にも論文掲載前の解析データが提供されていた。
「宮崎早野論文」問題の関連記事 伊達市民の被曝解析データを前規制委員長へ提供〜宮崎早野論文(2020年3月2日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2475
実測数より多いデータ解析〜宮崎早野論文に新疑惑(2020年2月28日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2470
「日本の科学は危機的」〜「宮崎早野論文」と研究不正調査を検証(2019年9月14日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2435
東大・福島医大「研究不正なし」〜宮崎・早野論文(2019年7月19日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2413
宮崎氏が伊達市に「同意書」確認〜宮崎早野論文問題(2019年年)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2408
伊達市議会「被曝データ提供特別委員会」設置〜宮崎早野論文問題(2019年6月26日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2407
規制庁が早野氏へご意向メール〜放射線審議会報告書の採用めぐり(2019年5月23日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2399
宮崎氏が伊達市議会の要請に応じず〜宮崎早野論文問題(2019年5月22日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2393
被曝データ不正提供で初のヒヤリング〜宮崎早野論文問題(2019年5月7日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2395
伊達市住民に100ミリ超〜「宮崎・早野論文」検証で指摘(2019年3月27日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2385
黒川氏が解説「宮崎早野論文問題」~伊達市議員勉強会(2019年2月26日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2371
千代田テクノルのデータを研究に使用認める〜宮崎・早野論文(2019年2月8日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2363
被曝データ提供問題で調査委が初会合〜宮崎・早野論文(2019年2月4日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2364
研究依頼文書に事実と異なる記述〜宮崎・早野論文問題(2019年1月24日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2361
1年半前「同意のみ使用」確認〜宮崎・早野論文問題(2019年1月19日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2359
「研究申請前に解析結果を公表〜伊達市の被ばくデータ」(2018年12月10日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2337
「個人線量データの不正提供か〜福島県伊達市」(2018年12月6日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2337
すべての番組は視聴者のみなさまからの寄付を基金に制作しています
OurPlanet-TVは非営利の独立メディアです。活動に関わる費用はすべて、会員のみなさまからの会費や、視聴者のみなさまからの寄付によって支えられています。
世界を見つめる視点を豊かにする―。 OurPlanet-TVは独立メディアとして「小さな声」を伝え続けます。 あなたもスポンサーとして、活動に参加してください。 継続的にサポートしていただける方はぜひ賛助会員にご登録ください。
※OurPlanet-TVは日本では非常に珍しい、認定NPO法人によるメディアです。
寄付・会費は税額控除の対象となります。詳しくはこちらをご確認ください。
"報告書" - Google ニュース
March 18, 2020 at 01:58AM
https://ift.tt/2Wmrk09
被曝データの提供「不適切」〜伊達市調査報告書 - OurPlanet-TV
"報告書" - Google ニュース
https://ift.tt/2RI6i8m
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment