posted2021/11/19 07:04
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
大谷翔平とともに今年のオールスターゲームにも出場したジャレッド・ウォルシュは、'19年シーズンに自身も二刀流選手としてプレーした経験を持つ。成績は打者として31試合に出場し、打率.203、1本塁打、5打点。投手は救援として、5試合で5回を投げ、1失点、防御率1.80。数字だけ見れば、投手の方が良かったが、「僕には両方やることが体力的にもメンタル的にもキツかった。今は打者に専念できて余裕が生まれた」と話す。そのウォルシュが挙げた大谷のベストシーンは、7月9日にシアトルで行われたマリナーズ戦だった。
3回1死。相手投手はそれまで11打数1安打、打率.091と苦戦していた左腕マルコ・ゴンザレス。カウント1-2から89マイル(約143km)のシンカーを捉えた打球は「ルーフ・テラス」と呼ばれる4階席まで飛んで行った。スタットキャストによれば、飛距離463フィート(約141m)、打球速度116.5マイル(約188km)の特大33号本塁打。ベンチではジャスティン・アップトンが顎が外れたような表情を見せ、頭を両手で抱えている。誰もが驚く衝撃の本塁打だった。
「本当に驚いたね。最上階だよ。でもね、あれはスタットキャストが間違っている。嘘だ。チームみんながそう言っているよ。あれは600フィート(約183m)飛んだって言ってる。ジョー(・マドン監督)も『大きな間違いだ』って怒ってたよ(笑)」
最新機器スタットキャストへのチームメイトからのクレームはこのときだけではなかった。6月25日のセントピーターズバーグでのレイズ戦。「1番・DH」で出場した大谷はメジャー初の先頭打者本塁打を放った。その際、打球は屋根付き球場であるトロピカーナ・フィールドの右翼席後方にある『キャット・ウォーク』と呼ばれる作業用通路に直撃した。このときの発表は飛距離453フィート(約138m)、打球速度116.1マイル(約187km)。だが、エンゼルスベンチではこの時も異が唱えられていた。マドン監督は「長くここで監督を務めてきたが、あれが453フィートのわけがない。もっと飛んでいる」と話し、それはウォルシュも同様だった。
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