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Saturday, February 27, 2021

お嬢様役は「遠い存在ではなかった」 映画「あのこは貴族」で好演の門脇麦 - 時事通信ニュース

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2021年02月27日12時00分

「有能な監督さんが心地よく才能とアイデアを爆発させられるよう、サポートできる人になりたい」と言う門脇麦=東京都内

「有能な監督さんが心地よく才能とアイデアを爆発させられるよう、サポートできる人になりたい」と言う門脇麦=東京都内

 今年で俳優としてのキャリアは10年を数える。門脇麦は「仕事を始めた頃は、おとなしい役が多くて、私自身がそうした感じに見られることがすごく嫌だった」と振り返るが、今やNHK大河ドラマからインディペンデント系映画まで幅広く活躍する実力派の地位を築き上げた。

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 得た自信で心境は大きく変化したようだ。「最近は、どう見られても『それはそれでどうぞ』という気持ちになってきた。この仕事で私の素を知ってもらうことは別に重要ではない。『女優さんってすてきですよね』と言われても、そう言われてナンボの仕事だと思えるようになりました」と笑顔で話す。

 映画の最新主演作は山内マリコの同名小説を新鋭の岨手(そで)由貴子監督が映像化した「あのこは貴族」。近年の日本映画では描かれることがなかった「リアルに存在する上流階級」の生活にスポットライトを当てた作品で「新しいチャレンジだった」と言う。

 東京の上流家庭で生まれ何不自由なく育った箱入り娘の華子(門脇)と、名門私立大学に合格し田舎から上京したものの家庭の事情で中退を余儀なくされた美紀(水原希子)の物語。まったく境遇の異なる二人が人生の岐路に立ち、それぞれの生き方を見つけていく姿をつづる。

 出演の最も大きなモチベーションとなったのは、今作が長編2作目となる岨手監督への興味だった。「日常生活の何気ないシーンを映画にちゃんと植え付けて、見る側に強烈な記憶として残せる方」と門脇。原作に書かれた「山内さんにしか書けない毒っぽさや面白いワード」を岨手監督がどう映像に落とし込むかにも関心があったという。

 浮き世離れした華子の人間像を「大事に育てられ、意志や自我を芽生えさせなくても生きていける女性」と分析した。20代後半となり、周囲からのプレッシャーで結婚相手を探すことになった華子が徐々に成長する姿を「演じながら見守っているような感覚があった」と振り返る。

 自身はニューヨーク生まれの東京育ち。周囲にはいわゆる「お嬢様」もおり、華子は「遠い存在ではなかった」と言う。映画で描かれる上流階級の人々の暮らしぶりに面食らうことはなかったものの、「これまで所作を気にしたことはなかったので、紅茶の飲み方などをユーチューブで見ました」と笑う。

 物語全体を「女性たちが、カテゴライズされ、自ら勝手にカテゴライズした自分から解き放たれる話」と捉えた。自身も俳優としてある種の「型」にはめられた経験を持つだけに、根底に流れるテーマに共感を覚えたのかもしれない。

 後半、住む世界が異なり決して人生が交わるはずのなかった二人はある理由で対峙(たいじ)して、人として心を通わせる。「人間賛歌じゃないけれど、そういうことってすてきだよねと。そういう映画だと思います」

◇多ジャンルの才能を引き合わせたい

 高校時代に日本映画で活躍する若い女性俳優の姿を見て刺激され、この世界に飛び込んだ。演劇界の鬼才三浦大輔が自身の作品を映像化した「愛の渦」で奔放さを隠し持つヒロインを演じ強烈な印象を残し、その後は一つのイメージに固まることなく多彩なジャンルや役柄でさまざまな表情を見せる。

 2月7日に出演作の大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」が終了したばかり。今作の公開を経て、4~5月には舞台「パンドラの鐘」(作・野田秀樹、演出・熊林弘高)が控える。個人的には「ヒリヒリ感があってギリギリのところでやっている人」の物語に引かれると明かすが、「自分の視界に入ってこなかったジャンルの作品を拒絶するのは違う」とも言う。「やってみたら『こういうのも意外といいじゃん!』との気付きもある。その幅は狭めたくない」

 演じる際には、常に「現場にどれだけ愛情を注げるか」「役に真摯(しんし)に向き合えるか」を第一に考えるという。「昔は余裕がなくて、嫌でも必死じゃないと追い付かなかった。今、必死だったあの頃の若い自分に対抗するためには、全力で現場に愛情を注ぐしかない。それを無くしたら終わりだと思います」と話す。

 同時に「素の人間」としての魅力を磨くことの必要性も痛感している。「結局、見た人の心が動くか否かは、その人の人間性に尽きる。今回も私が演じたからああいう華子になったし、希子ちゃんが演じたからああいう美紀になった。役者が持つ人間性と役がマッチして相乗効果となり、そのキャラクターとして映画に存在する。本当に普通に生きていけば、それがどう転んでも魅力になるのかなと思っています」

 今後は多ジャンルを行き来しているからこそできる「各分野の才能を引き合わせる役割」も果たしたいと願う。「『こういう役がやりたい』より、そのことが仕事での一番の目標かもしれません」。以前は周囲から勧められても絶対に無理だと考えていた監督業への拒絶感も薄らいできているといい、「いつかできたら楽しそう」と声を弾ませる。

 プライベートでは今、釣りにはまっているという。釣り仲間は芸能界には全く関係のない普通の人ばかりで、「大河ドラマをやっている」と言って返ってきたのは「へえ~」の一言だけだったとか。「私の良い部分も悪い部分も全部受け入れて、一番私らしい私を認めてくれる」。良い人間関係は確実に演技にも好影響を与えているに違いない。

 「あのこは貴族」は公開中。(時事通信社編集委員・小菅昭彦、カメラ・入江明廣)

 門脇麦(かどわき・むぎ)=1992年生まれ、東京都出身。この他の映画の主な出演作に「太陽」「二重生活」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「ここは退屈迎えに来て」「止められるか、俺たちを」「チワワちゃん」「さよならくちびる」など。

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