「死者ゼロ」達成までの道
新型コロナの感染拡大を、中国は短期間でどう抑え込んだのか。その答えが詳細に記されている合計40ページのレポートがある。WHOと中国が25人の有識者と共同でまとめた「コロナウイルス病2019(COVID−19)に関するWHO−中国合同ミッション報告書」である。
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「中国に関しては、1月末に1099例の新型コロナの臨床データが出ていたのですが、この報告書ではその50倍、5万6000例のデータが揃い、非常に価値のある記録となりました」(山形大学医学部附属病院教授・森兼啓太氏)
だが、2月末に公開されたこの報告書は研究者にしか知られておらず、一般の人が目にする機会は少なかった。新型コロナとは何か。それを知るうえで決定的な一次資料を、専門家とともに改めて読み解いていこう。
報告書の前半では、新型コロナが中国でどうやって感染拡大したかを分析している。その中には、見落とされていた新型コロナの新事実がある。
その第1が、トイレでの感染の危険である。
〈限られた症例ではあるが、糞便中で生存可能なウイルスが同定されている〉(以下〈〉中は報告書からの引用)
「患者の便から、新型コロナウイルスが発見されました。実は'03年に流行したSARSでも、香港のアパートのトイレの下水溝が感染経路になった例があります。『三密』を避けてマスクをしても、便座や、下痢便が付いた手が感染経路となるのです」(前出・森兼氏)
第2の新事実は、中国での感染のほとんどは赤の他人からではなく、自分の家族からうつされていたということだ。
〈344のクラスターにおいて、ほとんどのクラスター(78%〜85%)が家族で発生している〉
中国では、感染拡大を防ぐために都市封鎖が行われた。皮肉なことに家にいる時間が長くなることで増えたのが、家族間での感染だった。日本でも、家庭内感染への注意が必須だ。
「対策の基本は家にウイルスを持ちこまないことです。帰宅したら、玄関で手を消毒するか、洗面所に直行して手を洗いましょう」(前出・森兼氏)
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中国では8万人以上が新型コロナに感染、約3300人が死亡した。そして4月6日には、死者数が発生以来初めてゼロになった。報告書の後半には、新型コロナに中国がどのように対応したかが記されている。
中国の対応は3つの時期に分けられる。
発見から1月19日までの「第1段階」では、武漢や、湖北省から患者を流出させないことを目指した。ただし、この段階での対策は甘く、1100万人が暮らす商業都市・武漢市内は変わらぬ賑わいだったという。
「第二波」が来る
状況が一変したのが、1月20日〜2月7日の「第2段階」だ。中央政府は20日、武漢市に特別対策本部を設置した。23日には武漢市のロックダウン(都市封鎖)が始まり、鉄道や高速道路はすべて封鎖され、外出も禁止された。都市封鎖は人口5800万人の湖北省全域にまで拡大された。
〈湖北省は、地下鉄、フェリー、長距離旅客運送を含む全公共交通機関の停止など、最も厳しい交通規制措置策をとった〉
人の接触を最大限減らし、新型コロナを感染地域に閉じ込めておく。中国の厳しいロックダウンは効果的だった。
日本でも、より厳しく外出を抑制する必要があると警告するのは、WHO事務局長上級顧問・渋谷健司氏である。
「『接触8割減で2週間後に感染者の増加を抑えられる』という目標が示されたが、どの店を開けるか開けないか、議論をしている。中途半端な議論は逆効果なのです」
〈早期発見、早期隔離、早期診断、早期治療の原則をとっている〉
報告書にあるこの原則も、中国では徹底された。空港や駅で体温検査が行われ、北京市では発熱が見つかったすべての患者にPCR検査が実施された。早期発見をすれば、その人を隔離することで感染を広げずに済む。
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中国は、やると決めたら個人の権利など一顧だにしない。そうした政治体制が徹底した対策を可能にした側面もある。
武漢では、2月3日に病床数2600の新たな病院を開設した。軽症者向けには、体育館と展示場を利用した10の仮設病院も用意された。
「検査」と「隔離」の積み重ねによって、新規感染者数は1月26日をピークに下り坂に入った。2月8日には、中国全土での仕事は再開され始め、対策も「第3段階」に入った。患者を完全に隔離し、クラスターを監視するフェーズだ。
いま中国は、都市封鎖の解除によって感染拡大の「第二波」が起きるリスクにさらされている。
「ワクチンがまだない以上、2〜3ヵ月続くロックダウンと解除を2〜3年にわたって繰り返すことになるでしょう」(浜松医療センター感染症内科部長・矢野邦夫氏)
だが、危機を乗り越えた経験は大きい。いち早くこの報告書に注目したデータサイエンティストの松本健太郎氏は語る。
「新型コロナの感染拡大を抑え込むには、『これくらいやれば大丈夫』という思い込みを廃し、厳しすぎるくらいの対策を取る必要がある。この報告書はそのことを改めて教えてくれています」
未知のウイルスに打ち克つには、試行錯誤を繰り返すしかない。
『週刊現代』2020年4月25日号より
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May 04, 2020 at 04:00AM
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