それまでの人生で体験したことがない、それどころかその存在すら知らなかったような“異文化”と対峙したとき、拒絶する人と恐る恐る覗き込む人がいる。どちらかと言えば、ぼくは後者だろう。一見、受け入れがたいようなものも、自分なりに咀嚼することで、世界が拓けていくような気がする。そして、その後の人生をより豊かにしてくれると思うのだ。
『こいくちルームシェア』(ハルミチヒロ/芳文社)を読んだときも、そんな“異文化交流”の面白さをあらためて感じさせられた。
本作の主人公を務めるのは、19歳の今野ゆめ。高校卒業後、定職に就かず、引きこもり生活を続けている。そんなゆめを襲ったのは、両親の海外赴任。当然、なにもしていないゆめのことを、両親はそのまま海外へ連れて行こうとする。しかし、断固拒否するゆめ。英語も喋れないし、友達もいない。そんな環境へ行くのは怖い。
そこでゆめが提案したのは、両親が赴任先から戻ってくるまでの2年間、住んでいるマンションを「下宿」にし、そこの大家として切り盛りすることだった。
そんなゆめのもとに“シェアメイト”としてやってくるのが、三ツ矢三津子と色部のり子のふたりだ。デザイン関係の仕事に就き、サバサバした印象の三津子。派遣OLでゆるふわ系ののり子。ゆめは年上の彼女たちと慣れない新生活をスタートさせる。
本作はこの設定をベースに、ゆめが異文化に触れていくさまが描かれていく。その異文化とは、“オタ活”のことだ。三津子は大のマンガオタクで、重ための腐女子。自らは創作活動に手を出さないが、同人誌もこよなく愛する。もちろん、なかにはゆめには読ませられないような非常にエッチなものも……。
一方、のり子がどっぷり浸かっているのは、アイドル沼である。「おいもポテト」という女性アイドルグループを応援するのり子は、時間を作っては地方まで遠征に行くほどの情熱っぷり。“推し”への愛情が深く、ときには感激の涙を流してみせる。
まさか、シェアメイトがふたりとも重度のオタクだったとは……。これにはゆめもびっくりだ。
しかし、本作では三津子ものり子も、ただの痛い人としては描かれない。むしろ、“好きなもの”に夢中になることで、明日への活力を得ている、とてもイキイキとしたキャラクターであることが伝わってくるのだ。
最初こそ驚いていたゆめも、三津子とのり子が見ている世界に触れることで、これまで体感したことのなかったような気持ちを覚えていく。好きなものがあることで、元気になれること。そんなシンプルな感情が、引きこもり体質だったゆめを、少しずつ変えていくことになる。
本作を手に取る人のなかには、同人誌やBL、アイドルに一切興味を持たない人もいるだろう。そんな人たちはきっと、ゆめのように三津子やのり子に驚かされるだろう。なかには、ちょっと引いてしまう人もいるかもしれない。けれど、そこで本を閉じないでほしい。ゆめのようにほんの少し異文化に踏み出すだけで、想像以上に世界が拓けていくはずだから。
文=五十嵐 大
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April 16, 2020 at 03:37PM
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